小笠原伯爵邸 (245 画像)
この建物は、関東大震災後の1927(昭和2)年、小笠原家30代当主で、ケンブリッジ大学で学び貴族院議員などをつとめた小笠原長幹(ながよし・1885~1935)伯爵の本邸として建築された鉄筋コンクリート造の住宅。代々小倉藩を治める大名の家柄だった小笠原家所有の敷地は竣工当時20,000坪余り。いまなお約1,000坪の敷地面積を誇る。長幹は大正、昭和の家族政治家として生きた人であるが、芸術に深い理解を示し、彫塑家としての顔も持っていた。第8回文展(大正3)年に、「もものはな」という作品を出品している。
設計は大正・昭和前期の和洋折衷様式を得意とした曾禰中條建築事務所。1908(明治41)年に三菱を退社した曾禰達蔵と英国で建築を学んで帰国した中條精一郎(作家・宮本百合子の父)により設立された。他の代表的建築物に慶応大学図書館(明治45年)や日本郵船ビル(大正12年)がある。なお、曾禰は小笠原家と同族の唐津藩主で老中格だった小笠原長行(1822~1891)に仕えていた。
スパニッシュスタイルで構成された外観は、スペイン瓦や特製タイルの装飾壁面などにより優美な雰囲気を醸し出している。内部は、各室の配置により当時の華族の生活がうかがえる。特に庭に面した喫煙室には、日本では珍しいイスラム様式の装飾が施され、大理石モザイクタイル貼りの床、彩色漆喰彫刻の壁などの仕上がりは高く評価されている。また、邸内のステンドグラスは、小川三知が手掛けたものである。
第二次世界大戦後は連合軍に接収された。接収解除後は東京都の児童相談所などの施設に利用されたのち、空家状態が続き荒廃していたが、歴史的建造物に理解のある経営者によって2003(平成15)年修復され、現在はレストランやカフェになっている。

・東京都新宿区河田町10-10
公式ホームページ

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